Sponsored Link



闘神伝〜コスモアイアンヒーロー


3

 

Case08〜平八&一八&準



マーシャル「お、おまえ……ここに入るのか?」
ポール「おうよ! ミシマのジイサンがいるのはここだもんな」
マーシャル「ミシマの屋敷……」
ポール「よお、平八元気しているか〜! 実は聞いて欲しいことがあってよ、闘神倒したの俺って知ってた?!」
平八「うぬ……よく来たな、ポークよ」
ポール「だーかーらー俺は【ポール】って言ったら何度分かるんだっっ!」
平八「じゃあ、ボールだったかの?」
ポール「もういい、もういい……帰る」
平八「はっはっは! 今のはほんのジョークだ! さあ、入れ、ロウよ!」
マーシャル「ではお言葉に甘えて。おじゃまします」
 
 ここは礼儀正しくして相手の機嫌を損なわないことだ。
 なんといってもあの三島平八なのだから……。
 
 私たちが通されたのは客間だった。
 茶が出され、しばらく待つように鉄拳衆に言われる。
 ……隣の部屋にも誰かいるみたいだ。男女の声がする。
 
男「フン――貴様も凝りない女だな。俺はあのクソ親父に利用されているとは微塵も思っていない。……いや、それどころか逆に利用してやるつもりだ。楽しみにしてろ」
女「久しぶりに来てしてみたら、あなたも変わらないのね。こんなことだから、仁も家出してしまったのよ! いい、ちゃんと責任はとってもらいますからねっ!」
男「責任? この俺が? ははは、笑わせるな!」
女「じゃあどうしてここにいるの? なんだかんだ言って、借金肩代わりしてもらいに来たんでしょう? 怒りに任せて研究所破壊して、その請求書でヒイヒイ言ってるの、私、知ってるんだから」
男「そ、それはだな――これは大人のけじめっていうやつで――借金取りに追われているなど、この俺にできるわけないだろう……が……」
女「ふふふ、図星ってこと?」
男「仕方ないだろ! 勝手にアイビームが炸裂してだな……お、俺だって好きでデビル化したんじゃない!」
 
ポール「なーんか、この設定、どっかで聞いたような……」
マーシャル「ひょっとするとミシマの元御曹司ではないか?」
ポール「……ってことはよ、カズヤとジュン?」
マーシャル「間の悪いときに来てしまったな」
ポール「超ラッキー! 大チャンス!」
マーシャル「ええええ?!」
 
 ババーン! と豪快に襖を蹴り倒し、ポールは豪快に叫んだ。
 
ポール「闘神を倒したのは俺だぁぁぁぁぁぁ!!!」
一八「それが?」
準「あ、そう……」
ポール「れ、れ、それだけか?!」
準「今はそれどころじゃないの。大事な家族会議なんです!」
一八「次代遅れのローセンス似非ライダー格闘家か……。なんだ」
ポール「なんだ、とはなんだ! そっちこそ、相変わらず目つき悪りーぞ」
一八「……ふ、そういう貴様こそ、人生の進展はあったのか?」
ポール「正義の味方、コスモアイアンヒーローに娯楽はない」
一八「そうか。それは気の毒に……はははははっ! 嫁さんの一人もないとは情けない!」
ポール「人が気にしていることをズケズケ言うな! ついでに嫁さん大募集中――って、ジュン、再婚でも良かったら」
準「手当たり次第に声かけてんじゃないわよ!」
 
 ドカ、ベキ、バシッ!
 
ポール「痛ててて! そ、そうは言うけどな、カズヤの野郎よりはずっとマシだと思わないか?」
準「いいえ!」
ポール「そうドキッパリ言うなよ……くすん」
準「たしかに一八さんは性悪だけど、おかけで仁は立派に育ったわ。さすが三島家の血筋を引いているだけあるもの。……でもね、もしあなたが父親だったら……」
ポール「どういう意味だ? 性悪よりランクが下なのか?」
準「……もしあの仁が……ああ、ゾッとする」
ポール「だから具体的に言ってくれないと意味分からん」
一八「代弁してやろう! ――つまりだな、俺は性悪だがこれでも頭はキレる。そして母親の準は強く優しく美しい。これだけ条件が揃ったからこそ、仁が生まれたのだ。だが――父親が阿呆の格闘バカで天然ボケだとどうなるか? 想像してみろ」
 
 思わず私は想像してしまった……
 たしかに西洋人と東洋人のハーフだから外見はそこそこかもしれないが、問題は中身だ。
 あの目鼻立ちがくっきりした顔立ちで
「実は俺の親父、コスモアイアンヒーローなんだ。羨ましいだろ〜! てへ♪」
なんてやってみろ。
 思いっきり引くぞ、私は……。
 準は純粋だから――そのため一八の毒牙にかかってしまったのだろうが、天然と純粋の掛け合わせほど恐ろしいものはない。
 罪の意識がないぶん、何をしでかすか分からないからだ。
 
ポール「ううーん。俺の息子かあ。なかなか頼もしそうだな。コスモアイアンヒーローの弟子、ギャラクシーアイアンヒーローにして、一緒に正義の味方になるのか。いいな……やっぱり嫁さん欲しい……」
 
 もちろん、私だけでなく一八と準も思いっきり引いていた。
 奇妙な沈黙が流れる――ん?
 私の背後に誰かいる?!
 振り返ると、そこにいるのはビデオカメラ(もちろんハンディカムの最新版)を手にした、平八がいた。
 
平八「(小声で)――もっとやれ、ポークよ! ……面白い家族ドラマが撮れそうじゃ♪」
 
 なるほど……これだけ気楽になれるから、事業が大成功するのかもしれない。
 私は真面目すぎたのだろうか……。
 
 
Case09〜ヴァイオレット&仁&コンボット
 


 落胆するポール。
 それもそうだ。あれだけ「闘神倒したのは俺だ!」と言って回ったにもかかわらず、結局、誰一人としてまともに信じてくれなかったのだから。
 
マーシャル「大会で実力を示せばいいじゃないか」
ポール「う、う、だけどよ……あんまりにもひどい結果だ」
マーシャル「大会前で、皆、気が立っているだけだ」
ポール「そのわりには普通の生活してたぞ。あのカズヤだって……くそう」
マーシャル「せっかく日本に来たんだ、観光でもして気分転換しようじゃないか」
ポール「ありがとよ、マーシャル。そう言ってくれるのはおまえだけだ」
 
 そう言って素直に喜ぶ彼を見ていると、親友をやっていても悪くはないかもしれない。
 なんだかんだ言っても、コイツはずる賢さとは無縁だから、友を裏切るようなことはしないし、嘘はつけない。
 
 私たちは平八からもらった小遣いで、相撲を観戦がてら巌竜の息子を応援し、最新鋭のロボットを展示しているという、某大企業の展示会を見学することにした。ここは無料だから、貧乏人も大歓迎らしい。
 その中に一際、人目を引く動きをするロボットがあった。
 華麗な舞。
 繰り出す技。
 どこかで見覚えがある。
 
マーシャル「カザマ流古武道の型だ。すごい、ロボットが……」
ポール「もしかしてジュンのファンか?」
マーシャル「では、ミシマ印なのだな」
ポール「いや、よく見ろ……リーってついているぞ」
マーシャル「リー? どこかで聞いたような」
ポール「俺もそうだが、思い出せねえ。影の薄いキャラだったのか?」
 
 その時、タキシード姿の男がこちらにやってきた。
 髪の毛は紫という……センスがいいのか悪いのか……。
 
サングラス男「相変わらずマヌケそうなツラを下げているようだね、お二人さん」
ポール「へ? こんなコケスマシ(死語その2)野郎、知らないな」
サングラス男「……ふふ。なら、僕のことはヴァイオレットとでも呼んでくれ。あのロボット見たかい?」
マーシャル「あれは君が? 見事すぎるぐらいカザマ流の技を仕込んでいるな。人間といえどもうかうかしていられないぐらいだ」
ヴァイオレット「お褒めの言葉、感謝するよ。あれはね、コンボットといって、我が財閥の技術の結晶だ。次世代ロボットしての期待も高い。――よかったら、パンフレットを」
 
 どこからともなく現れた美人秘書から、ICカードを手渡される。端末につなげて閲覧できるらしいが……貧乏人には無意味すぎる……パソコン、ない。
 
ポール「それはすごいな、スミレちゃん」
ヴァイオレット「スミレちゃん……」
ポール「意味は同じだ、いいだろ。それより、次世代っていうぐらいなら、俺様のワザの一つや二つぐらい覚えさせることはできるんだろ?」
ヴァイオレット「……できないことはないが」
ポール「嫌なのか?」
マーシャル「なるほど。それを使えば、レストランを再開して、道場も続けることができるではないか! 欲しい……かもしれない」
ヴァイオレット「ええ、それはもう、喜んで! さあさあ、こちらに!」
ポール「……露骨すぎる接客だな……」
 
 控え室に案内され、私たちはコンボットに技を覚えさせることになる。
 最初はポールだった。
 もちろん。
 
ポール「崩拳〜〜!」
ヴァイオレット「……二十年前から進化してないな、君は」
ポール「見知らぬ男に言われる筋合いはねえよ」
マーシャル「やはり、君は知り合いか……。ううーん、しかし、思い出せない」
ポール「うお、すげー! まったく同じ動きしてるぜ」
ヴァイオレット「ははは。これぐらい造作ない。なんといっても我が財閥の自慢だからね。……そうだ。会場で君とコンボットが並んで動いてみればいい。実演販売できる」
マーシャル「それはいい。よし、ポールが終わったら、次はマーシャルアーツを学習させてみよう。この実演次第では買ってもいい……ただし数年先になるだろうが」
ヴァイオレット「それなら大歓迎! 数年後にはさらに性能が上がっているしね」
マーシャル「ううー、それは楽しみだ」
ポール「おいおい、商談しにやってきたのかよ……一文無しのくせに」
 
 会場でコンボットに指示を出すと、見事なまでにポールと同じ動きをするものだから、見物人がどっと寄ってくる。
 
ヴァイオレット「おおっ! すごい、すごいぞ! これで……三年後には確実に三島の財力を上回ることができるにちがいない。くっくっく……待ってろよ、三島ゲジ眉親子。ついでに準も僕のもの――」
マーシャル「君は……ううーん、出そうで出てこない。誰だっけ?」
若い男「やはり、ここにいたか! 母さんは渡さないぞっ!」
 
 バリン、とガラスが割れる音がした。
 客が一斉に慌てふためく中、青いフード姿の青年がこちらに猛突進してくる。
 
ヴァイオレット「きさまは、風間仁! いい加減にしろっ! 追いかける相手を間違えていると思わないのか!?」
仁「一番悪いのが母さんを騙した連中で、二番目に悪いのが母さんをたぶらかした連中で、三番目に悪いのが母さんを奪おうとする連中だ! おまえはどれにも属している!」
ヴァイオレット「僕の養子にならないか? そうしたら、あの三島を一緒に倒せるぞ!」
仁「……どうして思考がすぐそっちに行く? 断じてノーだっ!」
 
 仁の放った拳がヴァイオレットを直撃する――かと思ったが、彼も格闘家らしく間一髪で避けた。そして、そのまま拳は背後のコンボットに当たった。
 
ヴァイオレット「あああっ! 一体10億円するコンボットにっっっっ!」
マーシャル「じゅ、10億……私はそんなものを買おうとしてたのか……」
ポール「妙なスイッチ押すんじゃねえ! 動きが、コンボットの動きが!」
ヴァイオレット「に、逃げろ!!!」
マーシャル&仁「え?」
 
 コンボットが猛烈な速さで、崩拳の動きを繰り返している。
 チ、チ、チ、と何かを充填する音が加わって――。
 
 ドゴォォォォン!!!
 
 次の瞬間には見事な花火が打ちあがった。
 いや、正確に表現するとビームを搭載した崩拳が炸裂したのだ。
 何発も。
 やがて会場は跡形もなく、ただの瓦礫と化していた。
 幸いなのは、仁が乱入してきたとき、客たちが一斉に避難したから、怪我人がでなかったことだろう。
 しかし……。
 
ポール「あーあ、どうする、マーシャル?」
マーシャル「ううーん。責任はとれないぞ、私は」
ポール「そうだよな。元々、悪いのはスミレちゃんだよな。ボタン一個で性能が狂うコンボットがどうかしている」
マーシャル「逃げるか?」
ポール「もちろん!」
 
 私たちはハーレーに飛び乗り、その場を後にした。
 
ヴァイオレット「た、助けてくれ……! ポール、ロウ〜!!!」
仁「逃がすか! おまえを倒したら、つぎは三島の連中だ!」
ヴァイオレット「ひいいい……!」
 
ポール「そういや、スミレちゃん、どっかで見覚えあるんだよな?」
マーシャル「……ううーん、たしかにそうなのだが。記憶にあるはずなのだが」
ポール&マーシャル「誰だったっけ???」

 

闘神伝〜コスモアイアンヒーロー
――おわり――