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Case 05〜レイ&ブライアン
香港はいつ来ても活気があっていい。私の父は広東省出身だから、懐かしさを禁じえない――そんな悠長な回想に浸っている間もなく。
ポール「よお、レイちゃん♪ 元気に逮捕してるか?」
レイ「……」
ポール「どうした? いつもの元気ねえな。ソニーがまたまた新しいロボット出すそうだが、あまりにも高額(マジに高級車並みらしい)で手が出せなくて悲しいのかよ?」
レイ「……ちがう」
マーシャル「かなり訳ありらしいぞ。話を聞いてやろうじゃないか。私たちに力になれることがあれば遠慮なく、言ってくれ」
レイ「さすが、20年来の友人だけあるな。この私の悩みを聞いてくれるか?」
ポール「もっちろ〜ん♪ イエーイ!」
レイ「……おまえ一人で尋ねてきたら、私は100%門前払いしただろうな」
レイの話は意外にも――。
レイ「……というわけだ。張り込みの任務に追われているうちに、恋人に愛想付かされてしまってね……はあ……」
マーシャル「それは気の毒だな。しかし、まだ日は浅い。間に合うかもしれないぞ」
レイ「どうやって?」
マーシャル「詫び状を書くんだ。それを私とポールで彼女に直接渡してこよう」
レイ「しかし……」
マーシャル「グズグズするんじゃない。早くしないと新しい恋人ができるかもしれないぞ!」
レイ「そうか。そうだな……ありがとう、ロウよ!」
そして私たちは握手をした。
早くレイと彼女が仲直りして、結婚して、子供をもうけて欲しい。
……ほぼ確定一生涯独身親友ばかりと話していると、時々、むなしくなるのだ。
いろいろな意味で。
レイに手渡された地図を頼りに、彼女がいるというアパートに私たちは赴いた。
先ほどから気になっていたが、何者かが後をつけているようだ。
マーシャル「殺気だ……」
ポール「だな、これは」
マーシャル「どうする、巻くか?」
ポール「香港警察をスパイしてる野郎か……ここは一発、ぶっ倒してレイへの手土産
にしようぜ!」
マーシャル「おい、待て! 早まるな!」
そんな私の忠告を無視し、ポールは崩拳を放った。
……昔からワンパターンな奴。
ブライアン「無駄だ。これはもらう」
音もなくポールの背後に忍び寄り、たちまち煙のごとく奴は消えてしまった。
は、早い。
人間技ではない……。
ポール「……たは(>_<) ど、どうしよ……詫び状、とられちまったぜぇぇぇ!」
マーシャル「どうやら機密文書と勘違いされたらしい。……しかし」
以下、レイの詫び状内容
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Soory! ゴメン〜ゴ♪
僕ちゃんが悪かったから、許してちょ。
だって、だって、だってぇぇ、あの日、犯人クンがなかなかアジトから出てこなくってさ、僕ちゃん困ったわけ。
どーしよかな? デートしたいよ〜!!!
でも警察クビになったら、今度はデートどころじゃないしね。
そうなったら、ユーだって悲しいっしょ?
……そうなんだ、三か月分の給料貯金してね、ユビワ、買うことにしたんだよ〜。
てへ♪ 書いてて僕ちゃん照れちゃうな〜。
でもこれが僕ちゃんからユーへの気持ちだからね。仲直りしようよ〜、ね?
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果たしてあのスパイはアジトで――いや、それよりレイにどう説明しよう?
ポール「逃げようぜ、マーシャル」
マーシャル「今度ばかりはおまえの言うとおりだ。香港を早く出よう」
Case 06〜ペク&ファラン&ワン
ポール「よお、ペク! 今日も修行してっか?!」
ファラン「失せろ、オッサン」
ポール「せっかく道場に来てやったのに……またこのガキか」
ファラン「るせー! ガタガタぬかすんじゃねえ」
マーシャル「ほう。君があの生真面目で有名なペクの弟子か。……意外だな」
ファラン「右のオッサンも邪魔だ。今はな、大事な時期で師匠は人払いをしている。俺がその役目をしてるってわけだ。分かったか、オッサンコンビ」
マーシャル「大事な時期とは?」
ファラン「悪いが言えない」
マーシャル「必殺技の修行でもしているらしいな。……お邪魔した」
ナーバスな時期に訪問してしまったらしい。
私はポールとともに道場を後にしようしたのだが――。
ファラン「あーーーーー! 勝手に入るな、オッサン!」
ポール「秘密、といわれちゃこれが黙って帰れるものかよ! 知りたいのが人の性! あははははっ!」
マーシャル「ポール! おまえは人としての恥ってものを知らんのかっ!」
私の忠告を無視し、ポールは障子をガラリと開けた。
ファラン「やめろ、オッサン!」
ポール「……れ、れれれ? 修行かよ、これが?」
ペク「コラッ、ファラン! 人払いを――あっ、き、君はっ!」
ポール「鍋かよ? これが修行……?」
ペク「愚生格闘家のポールではないかっ!」
マーシャル「……この臭い、尋常ではないな。さては?」
ポール「中華の達人未満、分かるのか?」
マーシャル「薬草だな。しかもかなり高価だ。高麗人参なのか?」
ペク「さすがロウ。そうだ。知られてしまった以上、隠し切れない。これは秘境に根付いている幻の貴重な高麗人参で、大会に向けて半年かけて探し出し、やっと口にできるのだ」
ポール「半年も薬草探しするんなら、その間、修行したほうがいいような……」
ファラン「一口でも貴重だから、オッサンごときが口にできる代物じゃねえぜ。失せろ」
ペク「まあまあ。せっかくこうして尋ねてきたのだから、一緒に食そうではないか。これも何かの縁だ」
ファラン「けどよ、師匠。俺のためにわざわざ秘境まで行って、採ってきたんだろ? もったいないと思わないのか?」
ポール「というか、おまえがケチなだけだろ」
ファラン「ケチとはなんだ、スペシャル貧乏野郎に言われる筋合いはねえ!」
マーシャル「まあまあ。それだけ大事な弟子なんだろう。……ああ、君を見ていると、フォレストにもこれを食わせてやりたくなってくるよ……どうしている、我が息子よ!」
ファラン「あんた、あのフォレストの親父だったのか」
マーシャル「息子を知っているのか?」
ファラン「ああ。日本で会ったな、一度だけ。スペシャル貧乏オッサンに振り回されて、ちょっと気の毒そうだったけどよ」
ポール「……おうおう、修行だから仕方ねえ。それに勝手に日本に残るって言ったのは、フォレストだぜ」
マーシャル「そうか。早く日本に行かなくては……」
しんみりする私の前にペクがやってきた。そして硬く握手する。
ペク「それは心配だろう。泣けてくるなあ……ううう。もし、もしこれがコイツだとしたら……どんなにツライことか……ううう」
マーシャル「同情してくれるのか? ありがとう、ペクよ」
ペク「礼などいらん。やはりこれは縁だったのだ。……今夜は鍋を囲み、ともに語り明かそうではないか!」
マーシャル「もちろんだ」
ファラン「……なんか知らんが、俺も……うううっ――もらい泣き」
ポール「うう、お、俺も――なわけないだろ! 今のうちに鍋を制覇してやる!」
ファラン「外道だ、オッサン!」
ポール「るさいっ! 人生、弱肉強食だ! 毒キノコじゃない本物の高級薬草食ってやる!」
マーシャル「おまえは人以下だ、これからは親友じゃなく、親猿と呼ぶぞっ!」
ポール「なんと言われようが食ったもん勝ち――って、あれれれれれ? ない、鍋がないっ!?」
ペク「その手には乗らないぞ、ポール」
ポール「嘘じゃねえ! マジに鍋が空っぽだっ!」
ペク「まさか? 泥棒か?」
ファラン「ああ、師匠っ! あれ、見てください!」
ファランが指差した方向――天井を見ると、見覚えのある老人がぶら下がっていた。
ペク「あああっ! あなたはワン大人ではないですかっ!?」
ワン「ほーっほほほ。まだまだ未熟よの、おぬしら。涙の語り合いをしている間に、わしが食しておいたぞ」
ペク「それでは泥棒です!」
ファラン「そうだ、そうだ!」
ポール「……おこぼれでいいから、吐いてくれ」
マーシャル「やはりおまえは人の道を外れたのだな」
ワン「これは高麗人参などではないぞ、ペクよ」
ペク「え?」
ワン「高麗人参を模した――麻薬だ」
ペク「なんですって? たしかに、これは私が山で採ってきたものです」
ワン「そこの世話係こそ、我がライバルのチャイニーズマフィアの手先だ。高い金を出して案内させ、そして収穫し、加工した暁には、こっそりすり替える。――効能をごまかすため、麻薬の入った粉末のそれにしてな」
ペク「……そ、そんな……あそこの山が……いつの間に」
ワン「わしもつい最近、知ったのだ。これから一掃してくる。その前に毒味させてもらったわい。ほっほっほっ!」
ファラン「よかった……もし、それを食って大会に出たら、ドーピング検査で失格になってたかもしれない……。ついでに夜の街に繰り出す予定が消えたけど――ま、いいか」
ペク「ありがとうございます、ワン大人! この礼はいつか必ず!――よかった。ついでにファランを悪い道に戻させなくて」
ワン「ほっほっほ! 楽しみが増えたわい。こりゃ愉快!」
そしてペクとファランとワンは感動していたのだが……。
ポール「おい、マーシャル、毒味って言うけどよ、全部食っちまっていいのか?」
マーシャル「おまえより数倍の食わせ者なのは、たしかだろうな」
ポール「騙されているうちが花ってことか」
Case07〜シャオユウ&パンダ
ポール「よお、実は俺が闘神倒したのって、知ってた?」
シャオユウ「だったら証拠みせなさいよ」
ポール「この俺さまの優雅な身のこなし――」
シャオユウ「お行き、パンダちゃんっ!」
それからは見るも無残な結果だった。
ふわふわの触感に未だ勝てないポールは、パンダとどこからともなく現れたクマに思いっきり足蹴にされていたのだから。
ポール「痛てぇぇぇぇ! で、でも気持ちいいっ! ふわふわ……痛てぇぇぇ!」
フォレストよ、おまえ、苦労しただろうな……。
ここまできてしみじみ、実感しているよ。
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