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闘神伝〜コスモアイアンヒーロー



 

 The king of iron fist tournament 4 開催まで秒読みの日々。
「闘神を倒したのはカザマだよ! コスモアイアンヒーローなんて嘘だろっ!」と、かつてのファンだったはずの子供たちから罵られ、それはやがて全世界の格闘家たちにまで広まってしまった。
 汚名挽回のため鉄拳王格闘大会4に出場することにしたポール。
 しかし……。

「俺も歳だからな。予選で負けるとも限れねえ……こうなった先に手を打っておくか」

 歳をとるにつれて一徹な格闘家も、(悪い方向へ)知恵が回るようになってきたらしい。
 先手を打って誤解を解くって算段だろう。
 ……ガソリン代はポール持ちだから止めることもできず。
「フォレストよ、私の到着は遅れそうだ。すまない」
「なあに、ヤツもいい歳だ。親父が心配ばかりしてどうする?」
「一生涯独身者には分からないだろうよ、この心境」
「まだ嫁さんを募集中に不吉なこと言うな! ……あ、このついでに嫁さん探しもしようぜ。名案だろう、マーシャル?」
「冗談がキツイ……め、眩暈が……」
「るせー! 決めたことは決めた! じゃ、まずはミシェールん家だ!」
「……そうやって古傷をえぐるのか、おまえは」
「20年前のことなんか、あいつも忘れてらあ。昨日の晩飯、何を食ったか覚えてないくらいだもんな〜。はははっ(自棄笑)」
「それは別の意味でヤバいと思うのだが……」
 そんな私の思惑をよそにハーレーはスピードを上げていく。



Case 01〜ミシェール&ジュリア

ポール「よお、ミシェール!」
ミシェール「……」
ポール「なんだその顔は〜。ははーん、さては懐かしい俺サマの登場に、胸キュン(死語)か? てへへ♪」

ドバキッ!!!

ポール「#&=*XXXXX><@%!!!〜〜!」
マーシャル「退散しよう……ここにおまえの居場所はないようだ」
ポール「くすん、くすん……」

 表に出た私たちを迎えたのは、ミシェールの養女、ジュリア・チャンだった。

ジュリア「久しぶり、ポールおじさん!」
ポール「おじさんとは何だ、おじさんとは。コスモアイアンヒーロと呼べ!」
マーシャル「彼女ぐらいの歳ならそう見えても仕方ない。大人げないぞ、ポール」
ジュリア「……で、そこにいるもう一人の……もしかしたら、あのフォレストのおじいさん? あ、そうなんだね! その顔、そっくりだもん」
マーシャル「お、おじさんを通り越して……おじいさんとはいかなる意味だね、君っ!!!」
ジュリア「ええ? フォレストの師匠、ひげの生えた達人だよ、って言ってたからてっきりおじいさんかと……」
マーシャル「だとしてもだ、君っ! こ、この私のどこが老体だというのだねっ! 中華鍋と中華包丁で鍛え上げた華麗なこの肉体美……どこが老人だというのかねっ!」
ポール「そっちこそ、大人げないぞ。……小娘から見りゃ、ジイサンに見えても仕方ねえだろ。嫌ならその髭、剃れよ」
マーシャル「断じてそれはできない」
ポール「なんでだ?」
マーシャル「The king of iron fist tournament 1で日本に行ったとき、ブルース・リーを知らない子供たちから『あ、美川憲一にそっくり!』と、指差されたことがあってな……その時はよく分からなかったが、あとで後々、ミシマに調べてもらったら泣けてきたよ、私は……」
ジュリア「誰、それ?」
ポール「俺も知らねえぞ? 興味あるなあ。ジャパニーズヒーローか?」
マーシャル「いいんだ、知らなくてもいいんだぁぁぁ!」

 あまりにも悲しくなってしまった私は、ポールとハーレーを抱えてその場を走り去った。
 知らなくていいんだ、君たちはっ!
 ……息子にだって知られたくない秘密なのだ。



Case 02〜キング&アーマーキング

 次に訪れたのは孤児院である。キングはここの出身で、休暇には帰ってくるらしい。
 幸い、今日は日曜日で、目的は簡単に果たせたのだが。

ポール「よお、キング〜! 元気してたか?」
キング「……このオッサン、誰だ?」
ポール「またオッサンかよっ! ……だいたいなー、ミシェールといい、どーして俺の顔見たらこの調子か? あいさつぐらいしろよな」
キング「知らないものは知らないんだ。それにその横の髭のオッサンも知らない。残念だが、これからミサがあるから子供たちのいる教会に行かなければ――」
マーシャル「さきほどの娘よりマシだな……ははは(乾いた(笑))

 キングは小走りで去る。そして遠く小さく見えたところで、マスクを外していた。

アーマー「……なんだ、その顔は? まだ気がつかないのか、ポール?」
ポール「はあ? 日焼けしたキングかよ?」
アーマー「……そのボケっぷり、相変わらずだな」
マーシャル「もしかして、君は――キングか? あのマスク、弟子に譲ったというわけだな」
アーマー「そうだ。さすがロウ。君はまともそうでよかった……」
ポール「どーいう意味だ? 俺はまだボケちゃあいねえぞ」
アーマー「お互い歳をとったものだな。まさか、同窓会をするために私を訪ねたわけではないだろう?」
ポール「そうだ。そうだった! ミシェールん家ではまともに話せなかったが、今度はちゃんと目的を果たすぜ! ……あのな、闘神を倒したのは実はこの俺さ。どうだ、すごいだろ〜♪」
アーマー「それで?」
ポール「それでって……それだけかよ?」
アーマー「ああ」
ポール「他に感想は……」
アーマー「私は歳には勝てず引退を決意したが、おまえは相変わらずだな。けれど、お互い、歳をとったと思わないか?」
ポール「俺はバリバリ現役! ついでに嫁さん大募集中!」
アーマー「そうか。いいな、おまえはいつまでも若くて……」
ポール「だろ♪ へへへ、照れるな」
マーシャル「(小声で)――違うぞ、それは嫌味だ
ポール「へ?」
マーシャル「そうやっておまえは子供→大きな子供→ボケ中年→能天気老人へと人生を終えていくのだな……」
ポール「今日も天気がいいぜ!」

 私はあいさつもそこそこに孤児院をあとにした。
 ……どうしてこいつとこの私が親友って設定なんだ?!



Case 03〜Dr.ボスコノビッチ&吉光&ジャック一同

 某所研究室へ赴いた私たちだったが……。

ポール「よお、実は闘神倒したの、俺だって知ってた〜?」

 だが返答はない。
 不気味な沈黙――。

ボスコノビッチ「ヒャ、ヒャ、ヒャ」
ジャック一同「グイーン、ガコーン、キュウーン、ピコピコ(機械音)」
吉光「南無阿弥陀仏、色即是空、ゲームはナムコ」

 それでもしつこく「俺だ」を繰り返すポールに不意打ちを食らわし気絶させ、私は素早く研究室を去った。
 ――ここにいては危険です!
 そうフォレストの声が聞こえたような気がした。(だからまだ僕は生きてますってば、父さん!)



Case 04〜ニーナ&アンナ

 美人姉妹だ。歳をとったはずだが――。

ポール「よぉ! あいかわらず若作りしてんな、おまえら!」
アンナ「まあ、失礼ね! 冬眠してたんだから、歳なんて関係ないのよ。うふふ♪」
ポール「トウミン? 熊のとこで修行でもしてたのかよ?」
アンナ「……あんたと一緒にしないで。誰が獣なんかと過ごすものですか。この美しい私が」
ニーナ「誰が美しいですって?」
アンナ「ね、姉さん? 起きてていいの?」
ニーナ「……アンナよ、ね? まだ記憶が……。と、そこのホウキ頭と料理人崩れは?」
ポール「ホウキ頭って俺のことか?」
ニーナ「……名前……知らない」
マーシャル「どうやら記憶喪失らしい。闘神のことを話しても仕方ない。退散しよう、ポール」
ポール「キオクソーシツ?! しばらく会わないうちにシンデレラみたいなことになってんじゃねえかよ! どうなってんだ?」
アンナ「シンデレラですって? 彼女がいつ記憶喪失になったのよ?」
ポール「……ああ? 12時の鐘が鳴ったら酔いが冷めて、シラフになって慌てて服を着た美人ダンサーの話だろ?」
マーシャル「そのどこがシンデレラだ? ただのおまえの若き日々の思い出ではないか」
ポール「そんな楽しい思い出あるかよ……童話のはずが……ううん? あ、そうかっ! あれだな。あれだ、マーシャル!」
マーシャル「あれ? 白雪姫か?」
アンナ「バカね。記憶喪失になったのは眠り姫でしょ? で、最後は王子様のキスで目覚めるのよ〜ん。乙女の憧れね♪」
マーシャル「記憶喪失とは違うような気もするが……」
ポール「冬眠してたんだから、似たようなもんだ。それより、最後は王子様とエッヘッヘ(笑)で終わるだろ?」
アンナ「そうよ〜ん。……よかったら姉さんの記憶、戻してくれないかしら、コスモアイアンヒーロー様♪」
ポール「さすが、アンナ。気が利くな〜♪ これぞ、コスモアイアンヒーローの華麗なるフィニッシュ芸! 王子様の――」

 しかし私は見逃さなかった。アンナの瞳が意地悪く光ったのを。

 ドカ、バキ、ベキ、グギャ!!!

ポール「フギャァァァァァァ!!!」
ニーナ「よくもこの美しい私の唇を汚そうとしたわね、コスモバカ!」
ポール「ち、ち、違う! ただ、おまえの記憶を戻そうと……」
ニーナ「そんなことしたら脳みそが腐って、真性のバカになってしまうじゃない! 殺っ!」
ポール「痛ててててて! き、記憶戻ってんじゃねえか……」
ニーナ「……あら? ミラクルバカにロウじゃない? 久しぶりね。……あなたたち老けたわね〜。でも、私は美しいの。いいでしょー、羨ましい?」
マーシャル「相変わらずだな、ニーナ。せっかく遠来したのに、茶の一つも出してくれないとは」
アンナ「あら、急に訪ねてきたのはそっちじゃない? イイ男ならともかく、中年に興味はないの。ね、姉さん?」
ニーナ「いいこと言うじゃない、アンナ。そのとおりよ」
アンナ「よかった! すっごく久しぶりに意見が一致したわね! ……昔話でもしない?」
ニーナ「ええ、いいわ」

 そしてアンナが紅茶を出してくれたのだが、ポールのこの一言ですべてが終わった。

ポール「実は闘神倒したの俺なんだ。ついでに嫁さん大募集中! よかったら今度――」

 姉妹タッグの必殺拳を食らったのは言うまでもない……。


[2]へつづく