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前回までの俺の回想――準のデータが入ったコンボット軍団につかまっちまった。これでまた人質に逆戻りと落胆する俺……。
鎖でぐるぐる巻きにされて再び、屋敷の居間へ戻ってしまった。
ワイングラス片手に、ヴァイオレットが俺を見下すような視線をなげかける。
「……素直に僕の言うことをきいていればよいものを。三島家殲滅のためだ、悪いが協力してくれ」
「俺なんか役に立たないさ。三島の爺さんに情があるわけない」
「まず仁を捕獲するのが先決だ。デビル化の血を分析し、そのデータをコンボットにインプットすれば必ず勝てる。我ながらなんて素敵なアイデアなんだっ! はっはっは!」
高笑いしながら奴はジャンプした。……変なの。
そしてコンボット軍団はエプロンをして、ろうそくのついたショートケーキと、ローストチキンとメロンを俺の前に運んでくる。
♪ハッピーバースデーツーユー♪
♪ハッピーバースデーディアジーーーーンーーー♪
♪ハッピーバースデーディアジーーーーンーーー♪
♪ハッピーバースデーディアジーーーーンーーー♪
♪ハッピーバースデーディアジーーーーンーーー♪
♪ハッピーバースデーディアジーーーーンーーー♪
……以下エンドレス。
「それはいいけどよ、オッサン」
「オッサンオッサン言うな! 会長と呼べ!」
「はいはい、会長様。で、どうして仁の母ちゃんのデータを? さっきから俺の周りをうろちょろして、気味悪いぜ。『お友達を歓待しなきゃ』っていうわりには、鎖でグルグル巻きかよっ!」
「誕生日会データをインプットしている。仁が訪問したら歓待して捕獲するのが目的だよ。ふふーん、これであの仁も油断した隙に――の予定が、なぜか君に反応してしまってね。原因究明しなくてはいけない」
「……ただの欠陥品だろ」
「まさか! 我が財力と知力をすべて注いだこのコンボットに、欠陥品などありえない!」
「自慢してるわりには、朝ごはん作ったり、誕生日会したり……。だいたい、まず外見をなんとかしないと、怪しいだけだぜ」
「これは日常生活仕様だ。その気になれば決闘モードだってできるんだぞ。……とかやっていたら、資金不足で……擬似スキンはこれから開発予定だ」
「はいはい……」
なんか威張ってるわりには間抜けな奴だな。
仁を探しに来て、たどり着いた先はロボジュンの誕生日会……。
アホらしくて、俺は乾いた(笑)しかできなかった。
「あははははっ……はは……はあ……」
「母さんっ!!!」
「……って、そう思うほうが不自然だって言ったろ、会長様」
「いや、僕は何も……」
「え?」
「うん?」
「こんなところに閉じ込められたいたのか! まってろ、今すぐ俺が救出するからな!」
そ、そ、その声は――。
俺は叫んだ。
「仁っっっっ!」
けど姿がない。もう一度俺が叫ぶと、天井から返事があった。
「久しぶりだな、ファラン」
そしてシャンデリアが揺れて、一人の男が降りてくる。華麗に着地したその姿は、あの青いフードのジャンパーを着た。
「か、か、風間仁! きさま、いつの間に?!」
顔を真っ青にするヴァイオレットに、仁は平然と言った。
「……裏口が開いてたんだ。無用心すぎるそっちが悪い。で、母さんの声がするから、様子を探りにきた」
キッと殺気をみなぎらせ、仁は奴の胸倉をつかむ。
「どこに監禁してる? 答えろ、リー・チャオラン!」
「……どうして僕だと?」
「どう考えてもおまえだ。母さんにこっそり言い寄っていたのも俺は知ってるし、俺がガキのころわざわざ屋久島まで来て、『新しいパパ欲しくないかなあ?』って、言ってたのもしっかり覚えてる。で、このロボット軍団。……オリジナルを出せ。それが母さんだろ?」
「そうか。さすが準の息子。カンがいいな」
そうか?
カンが悪くても、これだけ『準』って叫んでたら、気づくと思うけどよ……。
「……くっ。残念だが、準はここにいない。このデータはあくまでも、僕の記憶から抽出したいわゆる【妄想モードジュン】だ。この家庭的なにおい……ああ、たまらない……」
「じゃあ、どこに?」
「それは僕も聞きたい。おそらく一八が知っているのだろうが……僕の力では捕まえられない。もはや人間を超えているからね。平八と親子喧嘩して共倒れしてくれるのが、現時点での理想だよ」
「そうか……。騒ぎを追ってやっとここまできたのに、母さんはいない……」
「日本に帰ればいいじゃないか。三島家なら知っているはずだ。ただ、正攻法では適わないから、僕はこうしてイロイロ策を練っているのさ。よかったら、僕と協力して――」
「断る。俺は俺のやり方であいつらを倒す。自らのこの手で!」
そして仁はコンボットを振り払いながら、居間を出る。
……ちょ、ちょ、ちょっとまってくれ!
大切なことを忘れてないかっ!
「仁っっっっっっっっ!!!」
くるりと振り返ったあいつは、怪訝そうな顔で俺を見た。
「どうしたファラン? このとおり俺は忙しい」
「どうしたもクソもあるかよっ! 肝心なこと忘れてないか、おまえ!」
「持ち物は身一つだから、忘れ物はないと思うが……」
「……二年ぶりに再会して、大ボケかましてんじゃねえよ……」
「俺はいつも本気だ。おまえが勘違いしてるんだろう?」
「あーあ、やっぱ変わってないな、おまえも。……俺を助けてくれ」
「え? 捕まっていたのか? てっきりリーと遊んでいるのかと。趣味悪いなと少し誤解してしまった。すまない」
「……真顔で言うなよ。情けなくて涙が出てくらあ」
「そうか。そういうことなら」
と、仁はまたリーと対峙する。
「俺の知り合いだ。解放してくれ」
「知り合い? 親友じゃないのか?」
「俺に友などいない」
「ううーん、でもそのわりには君のこと、血眼になって探してたぞ、この彼」
「知るか。ファランの奴は思い込みが激しいから勝手にそう言っただけだ」
「……そうなのか。片思いだったのか」
「……」
「……」
なにか妙に誤解してないか、このオッサン。
俺が反論する前に、仁の拳がヒットした。
リーでなく俺に!
「痛てぇぇぇ! な、なにすんだよっ!」
「それは俺のセリフだっ! おまえが意味もなくちょろちょろするから、俺まで誤解されてるじゃないかっ!!!」
「オーストラリアまで探しに来たのに、それはないだろ! 悪いのはそっちだ! シャオだってずーーっと心配して……だ、だから俺は……」
「え、シャオユウが?」
「そうさっ! ワン爺さんも心配してたし、俺の師匠だって……だから、絵葉書が来たとき、すぐに俺はここまで飛んできたんだ。心配してたのは俺だけじゃない」
「……」
「三島の爺さん警戒するのは勝手だが、少しは残された俺たちのことも考えてくれよ。そりゃ、イロイロあって母ちゃんのこともあるから、それは分からんでもないけどよ……」
仁の拳がすうっと、降りた。そして眉をしかめて、うつむく。
「すまなかった、ファラン」
「……そ、そ、分かればいいんだ。これで少しは借りを返せそうだな」
「借り?」
「高専時代世話になった礼さ」
「……でも救出するのは俺だ。借りは減らないぞ。それでもいいのか?」
「言われてみりゃ……。ま、借金は慣れてるから、平気、平気♪」
「なるほど」
そして鎖を解く仁を、リーは後ろで黙って見つめているだけだった。
なぜか苦笑している。
「思い出すな、昔を――あのころの一八と僕を。喧嘩ばかりしていたが、最後は仲良く一緒に飯を食って風呂に入ったもんだよ……いつから、こうなったんだろうな……」
そうつぶやくと、リーは「見せたいものがある」と言い、俺たちをパソコンの前につれていった。
インターネットから映し出されたのは、見覚えのあるロゴマーク。
そう、あの【ミシマコンツェルン】のHP!
リーがクリックしたのは会社概要じゃなかった。
――The king of iron fist tournament 4
開催の告知である。
仁が目を見開き、言った。
「いつのまに?! ……裏があるのは確実だろうが、急にどういうことだ?」
「すげぇ……賞金が、三島財閥会長の椅子かよっ!」
リーはサングラスを外す。
「僕も知ったのはつい、二日前だ。しかし開催日は一ヶ月後。三島家に何かあったのはまちがいないだろう。参加資格不当。世界中から猛者が集まる」
「会長の椅子……か」
あごに手をやり仁がつぶやく。その目はすでに意思を固めているのか、力強く光を放っていた。
「そんなものに興味はないが、あいつらを葬り去るには絶好の機会だ」
「……そうか。じゃ、俺はおまえとの決着を今度こそつけることにするぜ」
「君たちのことだから、そう言うと思ったよ。……実は、僕も参加することにしてね」
「オッサンが?」
「……オッサンじゃない。会長とよべ」
「はいはい。会長様」
「きっと準の行方の手がかりは三島家にある。今度こそ、彼女を救い出して僕は――」
見かけによらず、リーは純情らしい。
でもよ、もしそうなったら、仁の親父がこいつになっちまうのか?
……くっくっくっ。
面白れぇ。
これはこれで楽しみだな。
けど仁は嫌そうな顔をしていた。
それから俺たちはリーの屋敷を借りて、トレーニングに励むことになる。
仁が準の母親だから、リーの奴、俺の言うことは難癖つけるのに、あいつの頼みはほとんど首を縦にふっている。
……ムカつくけどよ、逆にそれを利用して、ここでしっかり鍛錬しとかないとな。
食事はもちろん、ロボジュンが作ってくれる。
さすが三島家の味をリーが記憶してくれたおかげで、飯は超一流にウマイ!
が……。
「さあ、疲れたでしょ。はい、タオル」
「さあ、疲れたでしょ。はい、タオル」
「さあ、疲れたでしょ。はい、タオル」
「さあ、疲れたでしょ。はい、タオル」
「さあ、疲れたでしょ。はい、タオル」
……以下エンドレス。
「あぁぁぁうるせぇぇぇぇ! なんで本当の息子のとこに行かないんだよっ!」
どうやら最初に俺のことを「仁」と認識してしまったらしく、コンボット連中、なにかあるたびに集団でやってくる。
「一台で十分だろっ!!! 夜もうるさくて眠れねえんだぁぁぁぁ!」
そうリーに懇願したが、一台作るのに何億もかかるから簡単に廃棄できないし、電気は体内で発電しているから、スイッチを切るということもできず……。
もうぶっ壊すしかねえな。
「それはやめたほうがいい、ファラン」
「なんでだよ、仁?」
「一台壊すたび、借金がかさんでいくからな。そうなったらおまえ、大会で優勝して会長にでもならない限り、今度は借金取りに追われるぞ」
「……う、言われてみれば……」
「だな」
そしてあいつは愉快そうに笑っていた。
くそぉぉぉ……。
結局、カッコイイとこないじゃん、俺……。
ため息まじりに、トレーニングを再開する。
一方のリーだけどよ、あいつ、かつての恋人アンナが押しかけてきて、今はトレーニングどころじゃないらしい。
「きゃーーー♪ 会長まで出世したのね! 素敵。さすがアタシのダーリン♪ あの自然大好き娘のことは忘れてあ・げ・る。だから、マイダーリン、アタシを幸せにしてね〜!」
「ぼ、僕は君のことはもう……けど、どうして、僕がリーだと?!」
「あら? メールくれたのあなたでしょ〜」
「え、え、え、え??? 知らない、僕は断じて知らない!」
「……うふ。照れちゃって。カワイイ人♪」
たまたま隣室にいた俺たちは、その会話をこっそり聞いていたのだが――。
「これで母さんから悪い虫を追い払えそうだ。くくくっ」
そう、そうなんだ。
アンナにメールを送ったのは、仁だったというわけだ。
こいつ見かけによらず、かなりセコイ。
三島家の血がそうさせるのか?
いや、単なるマザコン……か???
そんな俺たちの思惑とは別に The king of iron fist tournament
4 開催の日が迫ってくる。 勝負はそれからだ。
オーストラリアからの手紙〜END〜
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