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オーストラリアからの手紙-4-

 

4

前回までの俺の回想――をしないと、とてもじゃないがオーストラリアに行けないぜ!
だから旅館にいた俺をワン爺サンが特別に小型飛行専用機で、俺をブリズベーンに直行させてくれた。

 俺は機内食もそこそこに、黒いスーツとグラサンの男たちに囲まれて、オーストラリアの大地を踏んだ。
「うおっ! 暑い、あっつぃぃぃ!!!」
 そうか。ここは南半球。
 真夏のクリスマス……ってか?
 じゃあよ、真っ赤なコートを着たサンタクロースなんてのは、こっちではなにやってんだ?
 ……もしかして、水着でトナカイ? もちろん、サーフィン♪
「なんつー、想像してんだ、俺。おっさんの水着姿、連想しちまったぜ。……オエッぷ」
「では、ファラン様。これを」
 グラサン男から携帯電話を渡された。
「それぐらい持ってるぜ」
「ワン老師直通の専用回線です。それ以外のダイヤルは不通になってますので、お気をつけて」
「……爺サンと話すことなんかねえよ」
「定期連絡をしてください。一日、一回必ず。あと、シャオユウ様がカザマ様の消息をつかめたら、すぐに老師を通じて連絡してくださいとも」
「面倒だなー。でも断れないよな」
「当然です。飛行機チャーター代1200万円、即金で支払っていただきます」
「……まるで生死をかけた金額だな……はははっ……」
「では、カザマ様を見つけ出して、連れ帰るようお願いします――と、老師からの伝言です」
「はいはい。オーストラリア見学どころじゃねえな、こりゃ……」
 そしてグラサン男たちはまた飛行機に乗って、日本へともどっていった。
 ワン爺サンはちゃんと小遣いもくれたし、仁のことさえなきゃ、思いっきり遊べるのにな。
 よーーーーし!
 こうなったら、とっとと仁のヤツを探しだして、一週間ぐらい遊んでやらあ!
 もちろん、爺サンには「……すんません、まだ仁のやつ見つからないッス」とでも、言っておきゃすむことだし。
 へへへっ……。
 クリスマス&ハッピーニューイヤーバカンスを、楽しむからな!
 まってろよ、仁!!!
 俺のグレートワンダフルーホリデーな日々は、おまえにかかってんだぞ!


 ……ブリズベーンの街を果てしなく歩く俺。
 消印は明らかにブリズベーンだったが、住所まであいつは書いてなかった。
 そもそも「来てくれ」なんて、メッセージも。
 師匠が勝手にそう解釈しただけで……。
 ……。
 あ、そうだ!
 仁の映っていた背景に似た場所を探せばいい。
「さすが、俺。目の付け所がいいぜ!」


 ……が、これも成果がまったくなかった。
「ぐぁぁぁぁ! あいつ、エアーズロックまで行ったのかよぉぉぉ! こことまるっきりちがうじゃねえかよ!」
「まあ、君。落ちついて。……だいたい、これは変だと思わないのか? コアラは森に住んでいる。あんな荒野では無理だ」
 金髪の若い男がそう言ったが、俺は納得できない。
「オーストラリアっていえば、コアラ、カンガルーって相場が決まってらあ! ……うう、だから俺は……もしかして騙された……のか?」
「明らかに合成写真だな」
「じゃ、ブリズベーンにいるってことも、嘘なのかな……けど、どうしてあいつ?」
「さあな」
「仁……どこにいる? でも、この写真はたしかにおまえだよな……どうなってるんだ」
 街路でがっくり肩を落とす俺だったが、男の言葉がそれをすぐに打ち消してくれた。
「へえ、ジンっていうのか、彼」
「え……?」
「前に何度かボクシングジムで彼を見た。……同じ格好をしてて、一人でサンドバック打ってたぞ。……あまりにも話しかけづらいから、俺は遠くで見守るだけだったが」
「早く言ってくれよ!」
「……そっちがしつこく景色のことを言ってくるからだろ?」
「それは謝るから、早く、そのジムに!」
「あそこだ」
 と、男は道路の向い側にあるあるビルを指差す。
「あんなに近いの?」
「そのようだな」
「じゃああんたは?」
「俺もあのジムで練習しているのさ。そこに行く途中」
「そういうことか……それで……」
 さすがワン爺サンだけある。
 あれだけの大金持ちは、幸運パワーもたくさん持っていて、偶然とはいえ、苦もなく俺は仁と再会できそうだ。
 ……で、あとは……
「へっへっへ〜。待ってろよ、仁。バカンスするからな〜」
「……君たちはそういう関係だったのか。なるほど」
「へ?」
「一緒にバカンスをする仲らしい」
 反射的に俺は男に蹴りを食らわす――が、あっさりかわされてしまった。
「だ、だ、誰が、趣味の悪いっ!!! 俺はただ『早く仁を見つけて、でも爺サンには見つかってないと嘘ついて、その間、たっぷり貰った小遣いでバカンスをするんだ。もちろん、水着ギャルを探して、ビーチへゴー! ……金が足りなきゃツケにして、あとは爺サンに払ってもらえるし、もちろん、コアラちゃんをダッコして、写真にとって、シャオに自慢するんだっ!』……と、言いたかったのを、そっちが勝手にそう解釈しただけじゃねえかよ。失礼だ!」
「……分かるほうが無理だ」
「格闘っていうのはなあ、それぐらい瞬時に察知しなきゃ、相手に負けちまう。ってことだ」
 冷汗だ。
 ……つい、しょうもないことを口にしてしまったから、余計な勘違いされてしまいそうになったじゃねえかよ。
 そんな俺を男は見下すように笑って見つめる。
 ……なーんか、イヤな雰囲気。
 そろそろ退散したほうがよさそうだ。
「じゃあな、ありがとよ」
「待て、俺もそのジムに行くんだ。一緒に行こう」
「け、けどよ……その……練習中に邪魔しちゃ悪いし」
「君も格闘やってんなら、ちょうどいい。どれだけ強いのか、お手並み拝見だ。……それぐらいすぐに察知しないと、負けてしまう世界だから……だろ?」
「……」
 こいつ、みかけによらず、頭がキレる。
 仁のように真面目バカ動物愛護一直線じゃないから、なにを考えてるいるのか、今ひとつつかめない。
 けどここで尻尾巻いて逃げるってわけにもいかねえしな。
 俺のプライドが許さない。
「ああ、いいぜ。仁を探すついでだ、トレーニングもするからな」
「そうこないとな」
 そして男は手を差し出す。
「俺はスティーブ・フォックス。よろしくな」
「……ファランだ。よろしく」
 俺は握手をした。
 そして突然現れた新たなライバルに、心が躍動するのを感じずにいられない。
 ――久々に血が騒いできたぜ!

 おいおい、なんか本格的にカッコよくなってきたじゃねえかよ。
 ……くっくっく……この調子で展開してくれよな、作者さん!
 (するわけないでしょ、というか、主役を仁にでもしなきゃ、それは無理だよ)

[5]へつづく